⬛︎医療倫理
倫理は道徳の科学である。
ビーチャム&チルドレスが提唱する臨床倫理4原則→正義、善行、無危害、自立尊重
共同意思決定(shared decision making)では、患者の意向に沿った方針を決定する。
患者の意向が分からない状況では、その時に標準的と考えられている医療を行う。
⬛︎感染症
麻疹→皮疹出現前の感染力が強い。1歳以上で2回のワクチン接種が必要。診断後ただちに保健所へ届出
髄膜炎菌(による髄膜炎患者との)濃厚接触者への予防投与→シプロフロキサン経口単回またはリファンピシン1日2回の2日間またはセフトリアキソン単回点滴
針刺し事故の感染リスク→HIV0.3%、HBV30%、HCV3%
サル痘→ヒト-ヒト感染あり。4類感染症、ただちに届出。前駆症状は発熱やリンパ節腫脹(ない場合もある)、のちに全身皮疹。消毒用エタノールが手指消毒に適する。
⬛︎医療安全
practitioner-based errorsとsystems failures
cognitive aid→チェックリストなど視覚的にわかりやすい認知支援
Crew Resource Management→航空業界発
アクティブリスニング
⬛︎心拍再開後集中治療管理
・体温管理療法導入期よりロクロニウムを持続投与。体温管理療法中の脳障害の評価→持続脳波モニタリング
・心拍再開後で現在の体温は37.0℃。体温管理療法(目標体温34℃)の導入期にシバリング→表面加温(Skin counter warming)を開始する:シバリングは約35℃で最大になるため
・体温管理療法(目標体温34℃)の導入期の寒冷利尿期には低カリウム血症、低マグネシウム血症、低リン血症がみられる
⬛︎外傷
・通常ERではPSで後腹膜腔出血を探しにCTには行かない
・FAST陽性出血性ショック+切迫するD→C安定のため開腹手術
・Hybrid ER→2011年日本発。アンギオ装置を備えた初療室。2ルーム式なら予定CT撮影しやすい。PSでCT撮影。体幹部止血術と頭部外傷手術を同時にできるようになった
■中毒
・医薬品の過剰投与疑い,検体から原因物質を同定し、濃度を調べるには→クロマトグラフィーと質量分析法を組み合わせて測定
・トキシドローム:抗コリン薬中毒は皮膚の乾燥を呈する
・日本中毒情報センターの2015年から2020年までの一般医薬品受信報告では解熱鎮痛剤、感冒薬、眠気防止薬、催眠鎮静薬の順に多い
・活性炭繰り返し投与(MDAC)が有効→テオフィリン,フェニトイン,カルバマゼピン,フェノバルビタール
・2022年1月の医療事故調査・支援センターの「薬剤の誤投与に係る死亡事故の分析」:循環器系薬、麻薬、糖尿病薬、抗悪性腫瘍薬の順に多いとされる
■熱傷
・気道損傷(吸入損傷)ではしばしばCO中毒を伴う。初期のX線検査では所見に乏しい。上気道は熱損傷、下気道は化学損傷を受ける
・感染対策について,来院後すぐに気管挿管を行う際にはフェイスガードを装着して対応。温かい生食で洗浄し、特別な場合を除き予防的な抗菌薬投与は行わない
・広範囲熱傷の輸液ルートについて,末梢ルートは浮腫により逸脱することがあるため,腫脹してきても届く程度の長いカテーテルを使用する
・広範囲熱傷の輸液について,成人では尿量0.5 ml/kg/hrを目標にすることを基本とする。電撃傷では筋損傷が大きい割に、外表面上の(熱傷)損傷は小さく見えるため過小輸液に注意する。急性期の脈拍は体液管理の指標として鋭敏とはいえない
・木の下で雨宿り中に雷により受傷←側撃雷(木の下で雨宿りせず建物の中に入るべし)
■DMAT
・災害救助法は1946(昭和21)年の南海地震を契機に制定されている。1959(昭和34)年の伊勢湾台風を契機に制定されたのは災害対策基本法
・災害救助法の改正により被害が想定される災害発災前より応急救助が可能となった。災害対策基本法では定期的に見直しと改正を行う事と条文に謳われ,主に応急救助に関するさまざまな決まりを定めている。災害における応急救助に従事した医師等に対する時間外手当や旅費は災害対策基本法施行令に明記されている
・日本DMATに関する規定は、防災基本計画並びに厚生労働省防災業務計画に明記されている。DMATおよびDPATは医政局が所管している。DMATの体制等に関する規定は防災基本計画,厚労省防災業務計画などに規定されている。災害基幹病院(災害拠点病院ではない)の要件に、DMATを複数隊所有することが求められている
・新興感染症は今のところ法的に災害とは見なされていない。DMATは阪神淡路大震災の教訓など契機として発案され誕生した。熊本地震以降,保健医療調整本部の支援もDMATロジスティックチームの重要な活動となっている。DMAT創生期は都市型災害で多数発生する重症外傷や熱傷,圧挫症候群などの被災者を想定していた。東日本大震災では都市型災害のなどの救命医療のニーズは少なく,原子力災害や病院避難などの新たな活動を行った
・被災都道府県DMAT調整本部は被災都道府県保健医療(福祉)調整本部の指揮下に置かれることが改正活動要領に記載されている
■原子力災害
・被ばくと汚染の区別は重要。汚染とはもともと存在しなかった放射性物質が新たに付着することである。放射性物質は放射線を放出する能力を持つため汚染部位とその周囲は新たに被ばくを受ける可能性がある
・福島県県民健康調査で行われている検査で発見された甲状腺がんは,東京電力福島第一原子力発電所事故による放射線の影響とは考えにくいとされる
・CBRNEハザードにおけるR/Nは放射性物質・核物質を示す。これらの物質は不安定であるがエネルギーを放出して安定化する。そのため放置することで放射性物質の量(放射能量)が増加増殖する事はない
・放射線による生体影響は,被ばく・汚染・内部・外部の有無にかかわらずその透過作用と電離作用によるDNA損傷を緒とする。確定的影響による組織・臓器障害の出現には2週間前後,確率的影響の出現には数年~数十年を要する
・放射線に被ばくした生体の受ける影響は,外部/内部/全身/局所といった被ばく様式の違い,放射線の種類の違い等により異なる。そこで,いかなる被ばくもおなじ単位表すことで比較が可能となるように[Sv](シーベルト)という単位が開発された。外部被ばくで1mSvと内部被ばくで1mSvでは、人体への影響の大きさは同じとみなされる。内部被ばくは外部被ばくと比較して除染薬などの医療処置を講ずることで将来の被ばく線量を低減できる可能性がある
■薬物乱用
・処方薬や市販薬といった医薬品の乱用・依存が増加しつつある。。シンナー乱用患者は今日ではほとんど臨床現場では見かけず、危険ドラッグも近年ではほとんど市中に流通していない。大麻取締法による検挙者は急激に増加しているが、大麻使用による健康被害によって精神科医療にアクセスする者はさほど増加していない。
・睡眠薬・抗不安薬依存症患者は、連休期間や年末年始に離脱けいれんで救急搬送される傾向がある
・市販薬乱用:カフェインやジフェンヒドラミンは大量摂取時に心毒性がある
・ 医師はいかなる違法薬物に関しても警察通報の義務はない。守秘義務は刑法に定められている
・依存症の専門治療を拒む違法薬物依存症患者への対応:家族に対して地域の精神保健福祉センターの依存症家族相談窓口を紹介する
■敗血症
・世界における敗血症関連死の地域格差は大きく,アフリカや南米,(東)南アジアでは発症率,死亡頻度が高く,他の地域に比べて乳幼児の死亡率が高い
・侵襲時の内因性炎症トリガー物質としてDAMPs = damage-associated molecular patterns(ダメージ関連分子パターン)が重要視されている。外因性トリガー物質としてはPAMPs=pathogen-associated molecular patternsが重要である
・敗血症性ショックの診断は、"適切な輸液負荷にもかかわらず、平均血圧 65mmHg以上を保つために血管収縮薬を要す かつ 血中乳酸値>2mmol/L"で行われる
・SSCG-1時間バンドル ① 血中乳酸値を測定する。高値(>2mmol/L)であれば 再評価する。② 抗菌薬投与前に血液培養を採取する。③ 広域抗菌薬を投与する。④ 低血圧あるいは乳酸値≧4mmol/Lであれば、30ml/kgの晶質液の急速投与を開始する。⑤ 初期輸液に反応しない場合,平均血圧≧65mmHgを維持するために血管作動薬を投与する
・J-SSCG2020,SSCG2021ともに敗血症性ショックに対する血管作動薬の第1選択薬はノルアドレナリン,第2選択薬はバソプレシンの使用が推奨されている
■MC
・救急救命士法が制定される前の平成2年に公表された我が国の院外心肺停止社会復帰率は1%,今は7%程度。
・救急救命士が行うことができる処置に記載なし→持続陽圧呼吸
・循環器対策基本法の目標。急性心筋梗塞:病院前12誘導心電図伝送や病院間画像伝送連携を推進する。脳卒中:機械的血栓回収術実施施設へ適切に搬送するために救急隊に教育する
・令和3年10月1日施行となった救急救命士法改正:傷病者が病院収容後入院するまでの間に救急救命処置ができるようになった(処置内容ではなく処置場所の拡大)
・外傷性脳損傷や脳血管障害などの後天性の脳損傷によって残存する認知機能障害を総称する障害
・高次脳機能障害を持つ65歳未満の患者で就労できている割合は全世界で30-40%
・損傷後数年にわたって徐々に改善し,特に若年者であると改善する度合いは大きい
・びまん性軸索損傷による後遺症:注意障害,遂行機能障害,記憶障害などの高次脳機能障害が典型的
・若年者では外傷性脳損傷が,高齢になるにしたがって脳血管障害の割合が高くなる
■脳波
・脳波の基礎律動のサイクル数:正常9~13
・けいれん重積を疑われてERに搬送された患者のうち,心因性非てんかん性発作は20%程度
・ERに昏睡状態で運ばれてきた患者が周期性放電を含む高度の脳波異常を呈していた。けいれんは伴っていない→ザルツブルクの基準に従って介入
・急性症候性発作による非けいれん性てんかん発作重積状態が疑われる場合の介入→可及的速やかに原因疾患を同定する
・初回のけいれん発作でERに搬送された患者に対する介入→急性症候性発作の除外診断を行う
(急性症候性発作:原因が補正可能な病態(たとえば抗菌薬や抗うつ薬)では,てんかんに移行することはほとんどない。原因疾患を除去しないと抗てんかん薬は無効なことが多い)